2016年9月10日土曜日

屍鬼

イビツであることが誇りだった
あの小さな子は死にました
まずは色から忘れます
花咲ける森に受ける罰

イビツであることが誇りだった
あの小さな子は死にました
ロウソクの先の周波数
二度と咲かない花の罰

魔法だったらまだよかった
種も仕掛けもありません
魔法だったらまだよかった
めでたしの先を生きている

イビツであることが誇りだった
あの小さな子は死にました
ただれ腐って落ちた花
信じてしまった夢の罰



2016年4月7日木曜日

thirsty

女と別れてオリーブの午後を聴いている
ラッシュに乗って彼女はいまごろ
なんとなく言いそびれた言葉を僕は
コーヒーの中に溶かしてしまう

匂いだけを残して
人はいつも去るけれど
舌先に残るどよめきの
輪郭を愛と呼ばせてね
乾いた喉を潤すよ
君と逢うと、渇くから

「またすぐに逢いたいな」
言いたくて言わないでおく
理由がないと困るから
燃える様には僕らもう
生きてられはしないから
小さな炎を見つめている
同じ場所を見つめている

匂いだけを残して
人はいつも去るけれど
シーツに残るどよめきの
線画を愛と呼ばせてね
乾いた喉を潤すよ
君と逢うと、渇くから


女と別れてオリーブの午後を聴いている
ラッシュに乗って彼女はいまごろ
なんとなく乗りそびれた今日を僕は
コーヒーの中溶かしてしまう

湯気にメガネを曇らせて
君の形をふたたびみたび



2016年2月24日水曜日

受話器の向こうで君は

聴こえるのはいつも
削られた音だけで

押し付けても
押し付けても
あなたを伝えない

受話器の向こうで君は
受話器の向こうで君は

聴こえるのはいつも
言葉になる事だけで
近付けても
近付けても

あなたを伝えない
どんな色をしているの
君の唇は今

受話器の向こうで君は
受話器の向こうで君は