2014年1月25日土曜日


その青を、僕はもう知らない
舌に当るもの全てが新鮮だった頃
海に近い場所でだって
空を見ていたさ
しょっぱいものは、あなたがくれるから

懐かしい場所は、明日にでも消えてなくなってしまうかも知れない
できれば、そうしてくれ
歩けないほど懐かしい場所が
どうしてずっと、あるままなんだ

キスした後、唇をたたんで
涎の匂いを嗅ぐのが好き
リアリティ 離れても、確かな証拠でそれはあるから

「今度、海へいこう」
少し舐めて言えばいいさ
「しょっぱい。そりゃそうか」
シーツを濡らしてほしくてさ
洗う口実
歯ブラシみたいに開いてさ

舌に当るもの全てが新鮮だった頃
まだレバニラ定食が食えなかった頃
君の輪郭を丸っとなぞって少し笑う

その青を、僕はもう知らない
「君の唇の味を憶えていたい」
いまは血の味 鉄の味
冬の海は凍っちゃくれない
ひび割れた唇の皮を少し剥いていた

しょっぱいものは、あなたがくれていたから
まだ空を見る癖

2014年1月16日木曜日


岩と話ができないものか 2

「憶えているだけの、生き物
 いや、それをなんと呼べば

 見ていた、そして聴いていた
 完了しているのだよ、すべて
 話せやしない、すべて」

ただ角度が欲しいままに
またあの坂を登っていた
ああ 夏なんだな
集団下校を思い出している
あの日とおなじ場所なんだ

こんな風に差してたろうか
眩しい光の意味も知らずに
こうして此処に立つ
未来を透かした指と、
既に死んだ、ものの蝉を横目に見ながら

「いい気なもんだ
 ほんの少しだけ、匂いをちょっと
 後はよろしく、どうぞ勝手に
 だって、そうだろう
 俺たちはずっと見えているだけ
 知っていくだけ
 憶えているだけ
 増えていくだけ
 忘れ得ないだけ」
 

何度も過る
頼りの言葉を反芻している
いつかの映画で見た牛、牛よ
何故あんなにも万遍なく
寂しげにクチを揺すり続ける
生きて、生きぬく程に暴かれる事実みたいに
減らさないでくれ 増やさないでくれ
もう、たくさんだ!

「愉快なことがあったこころ
 工事が終わった朝みたいに
 突然はじまるヒグラシみたいに
 ブランコの次に選んでおくれ
 何人目かの同窓生
 一年に一度
 泣きにくる人」

欠けた最高のオルゴール
永遠に鳴らない筈の歌を
場所がずっと知っている
それを微かに伝えてくれる
ずっとまだある岩に染みてる

耳を当て、匂いをすこし
ああ 
勝手知ったる場所さえも

岩と話ができないものか
無駄じゃない事のひとつくらい
ずっと見てたよと早くつたえて

「すべてはただ完了している
 産まない
 そして
 見出せない
 岩である
 ただ其処にある
 場所
 が憶えているだけ」
可能性の夢をみて
「目覚めてしまった」
その朝に
笑ってしまえる何かがあれば
それは 素敵 ね

洗濯をはじめて 窓をあけて掃除をしよう
誤ったのかしら わたし
どこで いつ どちらに

教育はなく、苛まれるだけ
話せないことはまた増える
ほこりばっかり気にしていたら
いってしまった光も、居たね

可能性の夢をみて
「目覚めてしまった」
その朝に
ずっと布団で歩いてた
街は見ている 
いつも見ている