その青を、僕はもう知らない
舌に当るもの全てが新鮮だった頃
海に近い場所でだって
空を見ていたさ
しょっぱいものは、あなたがくれるから
懐かしい場所は、明日にでも消えてなくなってしまうかも知れない
できれば、そうしてくれ
歩けないほど懐かしい場所が
どうしてずっと、あるままなんだ
キスした後、唇をたたんで
涎の匂いを嗅ぐのが好き
リアリティ 離れても、確かな証拠でそれはあるから
「今度、海へいこう」
少し舐めて言えばいいさ
「しょっぱい。そりゃそうか」
シーツを濡らしてほしくてさ
洗う口実
歯ブラシみたいに開いてさ
舌に当るもの全てが新鮮だった頃
まだレバニラ定食が食えなかった頃
君の輪郭を丸っとなぞって少し笑う
その青を、僕はもう知らない
「君の唇の味を憶えていたい」
いまは血の味 鉄の味
冬の海は凍っちゃくれない
ひび割れた唇の皮を少し剥いていた
しょっぱいものは、あなたがくれていたから
まだ空を見る癖
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