吸血時代の愛
タグなき生の吹き溜りで
最安プランのブレーカーが落ちる
ヒーターの断末魔とふたり
タッチパネル、触れない理想
繋がらない自由を
あえて選べる権利がほしい
そこで永遠に生きるために
「最後に勝つのは」で始まる言葉
陽だまりの中の闘争領域
地獄の底からやって来た
正義の使者なのかも知れない
本当は美しく傷ついて
別の生き物になりたかった
吸血時代のキャリアパス
血液ちょっといただきます
代わりに夜をあげましょう
THE BODY
衣服の発明が育んだ迷宮に
私は殉教する
それはシュレディンガーの果実
愛は印刷する事が出来ない癖に
裏腹な言葉を必要とする
アルファベットで活版された
心があるとされる場所に
十万回以上話された言葉は死ぬ
亡霊になって月へと向かう
だけどすぐに還ってくる
重力に抗うこともできずに
柔らかな砂の丘
蟻になってそこへ沈む
身体
それはシュレディンガーの果実
象徴化した愛は地獄
恋という名の緊縛演技
「君がほしい」はメタファーではない
物神、肉の寄せ集め
梅雨前線
夢をあきらめないでをフィナーレに
ちょっと泳いでしまおうかなって
平日の午後の水道橋
けれどまたイヤホンを忘れて
湿った街を歩いている
梅雨前線 いつになったら
縦に並んだ曇りのマーク
知らない間にひび割れた
タイムラインに指がつかえて
御茶ノ水まで歩いて来てた
弾かれないギター
知らないオフィス
富士そばでもう飲んじゃうか
幸せになんて今すぐになれる
梅雨前線 どこまで行けば
縦に並んだ曇りのマーク
本当は濡れていたいのに
折り畳み傘は持っている
価値の国
「ずっと光を探してきました」
そう言って彼は目を閉じる
机の上にはよく磨かれた
古い裸のナイフが一本
小さい頃は多分人より
地面と遊んでいたと思う
死んだ蛹を手のひらで
いつまでもずっと暖めた
捨ててきなさいと言われた猫の
目で見る世界は気まずくて
空があることも忘れてしまう
こんなに長く生きてきたのに
鼻で笑って終わりなんてな
「ずっと光を探してきました」
そう言って彼は目を閉じる
瞼の裏の顔を見た
ナイフに映った自分を見た
世界が平らになってから
数字ばかりの毎日です
二つに一つの点滅で
価値のない血にされていく
捨ててきなさいと言われた猫の
目で見る世界は気まずくて
歩けない昼が増えていく
本当は少し話したかった
どこの誰かと聞かれる前に
「ずっと光を愛してきました」
そう言って彼は目を開けた
ナイフは既にどこかへ消えて
初めて彼と目が合った
新世界 (解決はしません)
新しい場所へ来たみたい
そんな気分で歩いていた
鼻から抜けるクラフトビール
いつかのままの夜の風と
湿った空気
深呼吸して
本当は憶えていたかった
ディオールの薄いリップ
800円の柔軟剤の匂い
新しい場所へ来たみたい
そんな気分で騙している
言葉は心を超えないらしい
外せない他人のブラジャー
深呼吸して
本当は傷なんてもう無いよ
解決はしません
イメージの星と東京を
歩いていく
邪魔者
松林を抜けて
真っ暗な海
水平線と
波の音
あなたさえいなければと
想うわたしさえいなければ
最終電車の
見知らぬ街
灯の向うで
海はひとり
あなたさえいなければと
想うわたしさえいなければ
終わらない音楽と
美しい孤独
最近調子はどうなのそっちは
風物詩になる僕らの会話
年に一度はこうして逢おうね
なんて言わなくたって
当たり前みたいに
そういえばの日々が
輝いていた訳じゃない
照らされていたことに
気付かなかっただけ
あの日と今で変わったこと
未来が少しすり減って
笑顔の意味が重たくなった
あの日と今も変わらないのは
戻りたい日々や場所が
どこかにある訳じゃない
毎日は出逢えない
僕らになっただけ
あの日と今で変わったこと
風は凪いで街は消える
田舎の夜は暗すぎるから
話をしよう、今夜もう少し
「おごらせて今日もごめん
沢山持って帰ってくるよ」
「楽しみにしてるその時は
飲みに行くよお前とまた」